障がい者差別の解消に向けて(第4回定例会一般質問)

11月28日、一般質問に立つ細野かよこ

11月28日、一般質問に立つ細野かよこ

今年最後の区議会では、4月から施行された「障害者差別解消法」に対する区の取り組みと情報公開制度について質問しました。中野ネットでは、「しょうがいしゃ」の表記については、「障がい者」と表していますが、法律などの固有名詞で害が使用されている場合は害の字を使用しています。

区の(職員が適切に対応するための)「対応要領」について

2013年に成立した障害者差別解消法が、4月から施行されました。行政機関や民間事業者に対して、障がいを理由とした不当な差別的取り扱いを禁止するとともに、行政機関に対しては、合理的配慮の提供が義務づけられました。合理的配慮とは、障がいのある人が日常生活や社会で受ける制約は、社会的障壁に原因があるとして、障壁を社会の側が解消していくことです。

2015年に障害者差別解消法の理念や方向性を定めた基本方針が閣議決定され、この基本方針をもとに、法律の規定に従い、行政機関の職員が適切に対応するための対応要領、民間事業者が適切に対応するための対応指針が、所管する府省庁毎に作成されています。地方公共団体の「対応要領」については、法律では努力義務になっているものですが、当区では「対応要領」を策定するとし、現在、その作業が進められています。 11月に3回、意見交換会が開催され、私も1度参加しました。参加者が少なかったことは残念ですが、会場では活発に意見が出されていました。 そこで、区が策定作業を進めている対応要領について伺います。

1点目。区が「対応要領」を策定しようとした理由、策定の目的は何か、お尋ねします。

差別解消法に、対応要領の策定にあたっては、「障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とあります。

意見交換会では、書類への記入に困難さを抱える方から、現在は代筆をお願いしているが、PDFデータだけでなく、ワード、エクセルなど、前もって記入ができるものをアップしてほしいという提案などがあり、他の方々からも大変参考になるご意見をいくつもお聞きできました。実態に即した対応要領策定のためには当事者、関係者の意見反映は欠かせない要件だと考えます。

パブリック・コメントではどのような配慮がなされるのか

2点目の質問です。対応要領の策定過程において、当事者や関係者の意見を反映するために、区はどのような工夫をされたのでしょうか。また、12月に予定されているパブリック・コメント手続きでは、障がい者の方々が意見を寄せるために、どのような合理的配慮がされるのか伺います。

障がいのある女性、子どもへの複合差別について

次に、複合差別の観点からお尋ねします。

障がいのある女性、障がい児は、障がい者への差別と同時に、性や年齢による差別も受ける「複合差別」を被る状態にあります。障がいのある女性については、2012年に市民団体がまとめた複合差別実態調査の報告があり、障がいのある女性の35%が性的被害の経験があるという結果や、就職の際の面接、賃金格差、妊娠、出産などさまざまな場面で差別を受けている実態が読み取れます。こうした状況から、相談窓口には必ず女性の担当者を配置するなどの配慮の必要性が、当事者から指摘されています。

基本方針にも、「特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する」という複合差別の課題が盛り込まれています。しかし、基本方針を具体化するために国が策定した対応要領には、具体事例の記述はありません。当区の対応要領も同様で、「合理的配慮の提供にあたっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮する」の記述に留まっています。この記述だけでは、複合差別の実態に結びつかず、障がいのある女性や障がい児への合理的配慮がなされにくいと考えます。

そこで3点目の質問です。複合差別について、区はどのような認識をお持ちでしょうか。また、対応要領の取り組みを進めるにあたって、例えば、研修プログラムに複合差別について学ぶ機会を設けるなど、複合差別に関する記述が必要と考えます。区の見解を伺います。

中野のまち全体で取り組む合理的配慮の提供について

この項の2つ目の質問、まち全体で取り組む合理的配慮の提供について伺います。この夏、私は障がい者差別の解消に向けて、民間自業者や団体への支援に取り組んでいる兵庫県明石市を視察し、泉房穂市長からお話を伺ってきました。明石市では、差別を解消する条例として「障害者配慮条例」、「手話言語・障害者コミュニケーション条例」「平等な任用機会確保のための条例」を制定し、積極的に障がい者差別解消の取り組みを進めています。その中の一つに、障害者配慮条例に基づいて、事業者や自治会などが段差を解消するためにスロープを設置したり、飲食店が点字メニューや筆談ボードを導入する際の費用を、助成する制度があります。スロープは、障がい者だけでなく、ベビーカーを連れたお母さんや高齢者からも好評だということです。泉市長は、「明石のまちの風景を変えたい」とおっしゃっていました。

明石市のような、障がい者への配慮の見える化は、市民が合理的配慮を実感し、スロープの例でも表れている通り、障がい者だけでなく、誰にとっても暮らしやすいまちの姿を実感することにつながります。こうした民間事業者や地域住民が一体となった、地域ぐるみの取り組みが進むことで、誰もが安心して暮らせるまちに近づくのではないでしょうか。

そこでお尋ねします。中野のまち全体で合理的配慮の提供を進めるために、事業者や区民の方に対して、法律の周知をどのように行っていくのでしょうか。また、事業者や地域団体が、積極的に合理的配慮を提供するための方策についての、区の見解をお聞きして、次の質問、「区政情報の公開について」に移ります。

情報公開制度について

私ども生活者ネットワークは、市民参加のまちづくりの仕組みづくりに取り組んでいます。市民参加を保証する1つが情報です。先日江戸川区議会第3回定例会で、「権利の濫用」を理由に請求を拒否できることなどを盛り込んだ江戸川区の情報公開条例改正案が可決した報道がありましたが、当区におきましてはすでに4年前の2012年、「権利の濫用」による請求却下を盛り込んだ条例改正をしています。

「中野区区政情報の公開に関する条例」の目的には、「区民の知る権利を保障し、区民と区との情報の共有を図ることにより住民自治と開かれた区政運営を推進すること」と書かれています。区の情報は誰のものかと言えば、それは納税者である区民のものであり、原則として制限を受けるものではなく、広く認められなければならないと考えます。当区の情報公開制度が、区民と区の十分な情報共有につながる制度として運用されることを確認するために、質問します。

2012年の条例改正で、権利の濫用、請求却下の規定が盛り込まれた経緯と理由について、1点目として伺います。

条例の第9条(公開請求の却下)に、「実施機関は、公開請求がこの条例の本来の目的を逸脱するものであり、権利の濫用と認められるときは、当該公開請求を却下することができる」と規定されています。

権利の濫用かどうかの判断基準は何か、具体的にお示しください。また、権利の濫用による請求却下を適用するにあたっての区の考え方を伺います。

当区の自治基本条例第2条 自治の基本原則に、「区は、区民と区との十分な情報共有を基に、区民に区政への参加の機会を保障しなければならない」とあります。区民の区政への参加の保障には、情報の共有が必要であることが、自治基本条例にはっきりと示されています。当区の情報公開制度が、住民自治と開かれた区政運営の推進のために機能するよう、「開示請求の権利」を大事にしていただくことを申し上げまして、私の質問を終わります。