第2回定例会一般質問—生活困窮者の自立支援について
6月6日(月)に開会した第2回定例会が20日(月)に閉会しました。今定例会の一般質問では、昨年4月から施行された「生活困窮者自立支援法」に関連して、中野区では実施されていない任意事業の「家計相談支援事業」についてと、昨年初めての一般質問でも取り上げた震災時のトイレ対策などについて質問しました。
生活困窮者自立支援制度について
初めに、生活困窮者の自立支援について伺います。2015年4月から施行された「生活困窮者自立支援制度」は、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を目的とし、社会保障と生活保護の間を対象とした制度としてスタートしました。自立相談支援、住居確保給付金の2つの必須事業、就労準備支援、一時生活支援、家計相談支援、学習支援の4つの任意事業、就労訓練の1つの認定事業からなる制度で、当区では必須事業に加え、4つの任意事業のうち、就労準備支援、学習支援の2つが実施されています。
●事業がスタートして1年が経過しました。事業に取り組んできて感じていることは何か、併せて、見えてきた課題は何か、伺います。
生活再建の事業効果が高い「家計相談支援事業」
2015年12月の厚生労働省の懇談会資料の中に、「家計相談支援事業」について興味深い報告があります。家計相談支援事業は、家計に関する相談、家賃、税金、公共料金等の滞納の解消、債務整理の支援、貸付のあっせんなどを行う事業で、家計の視点から専門的な指導や助言を行い、相談者の早期の生活再建をめざすものです。資料によると、家計相談支援事業を利用した場合、利用しない場合に比べて、家計改善では約3.3倍、債務整理に関しては約5倍、対人・家族関係の改善でも約1.8倍の支援効果があり、さらに、就労収入の増加割合が2倍以上高く、家計改善だけでなく、生活習慣の改善、住まいの確保・安定、自立意欲の向上といった、生活の質の向上等にも寄与するなど、事業効果が高いことが挙げられています。そこで、当区ではまだ取り組まれていない、家計相談支援事業に着目して、3点質問いたします。
2016年4月現在、23区の中で家計相談支援事業を実施している区は16です。東京都では、2018年度を目処に全自治体でのこの事業の実施を要請しており、事業を実施していない区と市に対する支援策として、東京都生活再生相談窓口での家計相談を広域実施していますが、昨年度、当区の自立相談支援窓口を経由して、都の生活再生相談窓口につながったのは0。つまり、都の支援策である家計相談につなげられていない状況です。
先日家計相談支援に従事している方に話をお聞きしました。自立相談支援の担当者が家計相談支援事業の位置づけ、有益性を理解していないと、家計の問題が放置されたままのことがあり、一旦は就労などで生活再建ができたかのように見えても、収入はあってもローンの返済ができないなど根本的な問題の解決になっていないため、再び生活困窮に陥ってしまう、と指摘されています。家計相談は、同じ人を再び生活困窮者にしないという意味でも大変有効な事業だと考えます。
●家計相談支援事業を実施していない当区においては、実施体制が整うまでの間は、東京都の支援策である事業を積極的に使い、連携していくべきだと考えます。区の見解を伺います。
●国や東京都では、自立相談支援事業、家計相談支援事業の従事者を対象にした研修を実施しています。当区の自立相談支援の担当者、窓口担当者がこうした研修に参加し、家計相談支援事業への認識を深めることが必要だと考えますが、区の考えはいかがか伺います。
「家計相談支援事業」は、生活再建の効果が実績としてあげられており、家計を見ることで相談者の生活全般を把握し、隠れた問題の発見にもつながる、将に生活困窮者自立支援制度の「肝」になる事業だと考えます。
●生活困窮者の早期発見、早期支援に向け、当区でも家計相談支援事業をできるだけ早い時期に実施すべきだと考えます。事業実施に向けた区のお考えを伺いまして、次に、直下地震の備えについて伺います。
直下地震の備えについて
2013年末に内閣府が、30年以内に70%の確率で直下地震が発生すると発表しました。この20年余りの間に、阪神・淡路大震災、中越地震、中越沖地震、東日本大震災、そして今回の熊本地震と、震度7クラスの大地震がこれだけ起きています。これらの地震から学んだものを、これから起きる可能性の高い大規模地震への備えとして、自治体と住民それぞれが積極的に関わって活かしていく必要があると考え、今回は被災者の健康に焦点を当てて伺います。まず、発災直後から誰にでも起こるトイレ対策についてです。
内閣府は熊本地震の直後に「避難所におけるトイレの確保・管理のガイドライン」を公表しました。これは、避難生活を支援する行政が取り組むべき事項の内、トイレの確保と管理に関して指針を示したもので、災害時におけるトイレ問題が心身に与える影響の重要性、とりわけ、女性や高齢者、障がい者、子どもなどへのきめ細かな配慮の必要性からガイドラインを作成したと聞いています。
本テーマにつきましては昨年の第2回定例会で、「緊急事態が起きた場合の男女のトイレ設置比率を1対3にすべき」と示した「スフィア・ハンドブック」を取り上げ、避難所運営における参考資料の一つとしていきたい、との答弁をいただいています。 今回発表されたガイドラインでも、「被災状況下でのトイレの個数の目安」の項で、スフィア・ハンドブックが参考にされ、例えば学校では女子30人につき1基、男子60人につき1基を基準に設置とあります。
●そこで1つ目の質問です。当区における避難所へはどのくらいの避難者が来ると想定されているのでしょうか、また、想定人数に対して、トイレはどのくらい確保されているのか伺います。
●内閣府のガイドラインを受けて、必要なトイレの数の確保をどのように行っていくのか、2点目として伺います。
ここまでは区のトイレ対策に関して伺って参りましたが、どこの自治体でも行政だけでトイレを確保するのはとても難しい現状があります。そこで災害時のトイレは、区民一人ひとりの日頃の備えが非常に重要です。
●自助として区民ができる災害時のトイレ対策として、凝固剤と袋がセットになった災害用トイレや簡易トイレの準備をもっと呼びかけていく必要があります。それには、区の防災担当だけでなく、防災リーダーの力を活用して積極的に地域で出前講座を実施したりするなど、自助の必要性を伝える必要があると考えます。区の見解を伺います。
エコノミークラス症候群の回避について
熊本地震では、頻発する余震への恐怖などから建物の中で眠れず、車で寝泊まりする光景が多く見られました。過去の震災でも問題となっていましたエコノミークラス症候群は、こうした車中泊で足を伸ばして寝られなかったり、トイレが汚い、少ないなどの理由で水分を控えたりして起こる身体の症状で、命の危険を伴います。
●地震で助かった命を、避難生活で落とすことがあってはならないと考えます。区はエコノミークラス症候群に対してどのような対策をお持ちか伺います。
液体ミルクの導入について
災害時に必要度の順位が高いものとして乳児用の粉ミルクがあげられますが、災害時には、水がない、容器の消毒ができないなどの状況が発生するため、乳児の親たちから液体ミルクの導入を求める声が上がっています。液体ミルクは常温で保存がきき、そのままで飲ませられますが、現在国は乳児用の食品を「粉乳」と限定しており、国内では液体ミルクは認められていません。したがって、国内での製造・販売もされていないため、個人輸入などで手に入れるしかない状況です。先ごろの熊本地震でも国会議員のグループが緊急輸入し注目を集めていました。
●区は液体ミルクについてどのような認識を持っておられるかをお聞きして、私の全ての質問を終わります。