「ゼロカーボンシティ宣言」の次は「気候非常事態宣言」を

2021年10月28日、中野区は「ゼロカーボンシティ」を宣言しました。内容は、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指すものです。宣言文にあるように、地球温暖化に伴う気候変動の影響は世界中で深刻な問題だと認識されるようになりました。

温暖化の原因は人間にある

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8月、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」とする報告(第6次評価報告書)を公表しました。地球温暖化の原因が人間の活動にあると指摘したのです。そして、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この報告が「人類への赤信号」だと発言しました。

このまま温暖化が進めば、水不足、生態系の異変、自然災害による農作物の不足などその影響は地球規模で甚大なものになると想定されます。もはや気候変動は、一刻も早く手を打たないと手遅れになる気候危機の状態にあります。

IPCCの指摘は、これまで中野・生活者ネットワークが発信してきた、気候危機は環境負荷の高いライフスタイル、都市化、自然破壊など、人間の行動に起因しているという主張と合致しています。
言い換えれば、気候危機は私たち人間の行動変容によって、今からでも最悪の事態を回避することが可能だということです。

温暖化対策を「脱炭素」に矮小化しないために

中野区がゼロカーボンシティ宣言をしたことは、温暖化対策として意義あることだと思います。しかし同時に、温暖化対策を二酸化炭素の削減ばかりに焦点を当てて問題を矮小化しているのではないかとの危惧も抱きます。
数字に表される二酸化炭素の削減を追い求めることで、別の環境負荷をもたらすことを軽視してしまうのではないかという危惧です。

例えば、二酸化炭素を出さないからと原発を推進することは、放射能や廃棄物の影響など、環境汚染を増幅することになります。

11月に開催されたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で、岸田首相のアンモニア発電に対する演説が「化石賞」を受賞しました。温暖化対策に消極的な国に贈られる賞です。アンモニア発電は技術が確立していないことに加え、窒素酸化物などの大気汚染物質が排出されるからです。

いのちと暮らしの土台である「環境」の保全と修復のために

生活者ネットワークは数年前から、自然の力を賢く使った「グリーンインフラ」によるまちづくりを提案しています。私も2017年9月の第3回定例会で一般質問しました。

現状の都市環境は、舗装やコンクリートの人工被覆で雨が浸透しません。豪雨時には下水道が処理しきれない雨水が汚水とともに河川に流入し、海へと流れます。さらに水害対策のために環七地下や河川脇の空間に大規模な調節池が造られています。人工的なコンクリートのグレーインフラで生じた問題解決のために、さらに大掛かりなグレーインフラを際限なく造り続けている状態です。

一方グリーンインフラは、雨水浸透ますの設置で涵養を促し、緑化、緑地の保全で雨水を土壌に浸透させて自然の水循環を促します。ヒートアイランド現象の緩和にもなり、温暖化対策にもつながります。
人工被覆の問題は、インフラのみならず、公有地・私有地を問わずコンクリートで覆ってしまう土地利用の問題でもあります。
また、身近な地域で生物多様性を保全することも、環境保全、人間が破壊してきた自然の修復につながります。

「環境」は、私たちのいのちと暮らしの土台です。土台がしっかりしていないと、いのちも暮らしも守れません。
ゼロカーボンは温暖化対策のための重要な方策の一つですが、それだけでは環境の保全、修復の対策として不十分です。ゼロカーボンの取り組みとともに、区民と気候危機問題の逼迫性を共有し、まちづくり、土地利用のあり方、ごみ、食品ロス、プラスチック問題など多岐にわたる環境負荷の高いライフスタイルの見直しにつながる行動を促すために、中野区が「気候非常事態」を宣言することを提案します。