「介護の社会化」を後退させるな—次期介護保険制度の改正に向けて—

介護の社会化を後退させるな!

「介護(ケア)」は私が力を入れて取り組んでいる活動の重要なテーマの一つです。
11月11日は「介護の日」であること、次期介護保険改正内容のとりまとめが迫っていることから、マンスリーレポート11月号ではトップ記事で介護について書きました。この記事に若干加筆し投稿します。

今年22歳を迎えた介護保険は、制度発足以降3年ごとの見直しで利用抑制と負担増が繰り返されています。2024年の介護保険制度の改正に向けて、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会での審議は実質11月28日に終了し、年内に結論が出される予定です。そして2023年1月に閣議決定、2023年度通常国会での審議を経て成立というスケジュールです。しかし、次期改正の内容には「介護の社会化」を後退させかねない、大きな問題があります。

自己負担2割の対象者拡大

介護保険の認定者は2020年度669.3万人、そのうちサービスを利用しているのは515.8万人。介護認定を受けてもサービスを受給していない未利用者は100万人を超えています。また、現状の1割負担でも経済的な事情でサービスの利用を控える人がいます。
利用者負担を原則2割にし対象者を拡大することは、利用料が実質2倍になることであり、必要なサービスの利用抑制が懸念されます。
さらに、物価高騰で生活費が圧迫される中、年金生活者にとっては、年金が減って利用料が増えることは何重もの負担増になります。

ケアプランの有料化

現在10割給付で作成されているケアプラン(介護サービス計画)に、利用者負担を導入するものです。ケアプランは、介護保険サービスを利用するにあたっての入り口であり、適切なケアマネジメントのために重要です。有料化で“利用控え”が起こる恐れがあり、早期発見・対応に遅れが生じる可能性があります。

要介護1、2の訪問介護、通所介護の保険外し

要支援1、2の訪問介護、通所介護はすでに2017年に、市区町村が行う地域支援事業へ移行されていますが、これを要介護1、2にまで拡大して、保険給付から外そうとしています。
介護サービスを利用する理由で最も多いのが認知症ですが、認知症があって要介護1、2の方々は、最も配慮が必要な時期の方です。決して軽度者ではありません。
こうした方々のサービスが、保険であれば給付を受けられるのに、自治体の事業に移行されると自治体予算の範囲内でサービスが提供されることになります。また、自治体ごとに単価や基準が違うものになってしまい、状態の悪化を招きかねません。

福祉用具の一部をレンタルから買い取りに

福祉用具は自立や介護を助けることで「暮らしを支える」大切な用具です。杖1本でも選び方、使い方によって転倒につながることがあり、状態の変化によって必要な用具もかわります。レンタルであれば状態の変化に応じてその都度最適な用具を選ぶことができますが、買い取りになれば、価格で選んでしまったり不適切な用具を使い続けたりすることが発生します。

介護現場と乖離する「介護保険制度」

他にも施設職員の配置基準の緩和など、制度の維持ばかりが強調される検討内容です。
介護の現場ではヘルパーの高齢化、介護人材の不足なども深刻化しており、介護職の労働条件改善も必要です。
介護保険制度は今、ケアを受ける側、ケアを提供する側のどちらにとっても、現場の実態からの乖離がますます大きくなろうとしています。

しかし、介護を担う女性たち、当事者らが行動を起こし、押し返す動きもあります。
安心して介護を受けられる社会のために、私も諦めずに声を上げ続けます。