雨水を自然の恵みにかえる水害対策を(第2回定例会一般質問から①)
2024年6月14日、中野区議会第2回定例会で一般質問に立ちました。
以下、質問と区の答弁です。
1 水害対策について
(1)グリーンインフラを取り入れた流域治水について
(2)区民との取り組みの推進について
2 介護保険の持続可能性について
(1)訪問介護について
(2)地域支援事業について
(3)その他(ケアラーズカフェについて)
3 放課後等デイサービスについて
以下、質問と区の答弁です。
グリーンインフラを取り入れた流域治水について
市街化が進んだ都市部では、雨水は地面にしみ込まず、舗装された道路を流れて、河川や合流式下水道に集められます。降雨時に下水道の処理能力を超えると、河川に流入して増水し、水害が発生します。
流域治水は、流域全体の保水力を高めることで、雨水の下水道から河川への流出を抑制します。東京都の総合治水対策は、1時間当たり75ミリの降雨に対応することを目標にしており、その内訳は、河川への流入50ミリ、調節池での対応15ミリ、流域で10ミリとしています。
中野区は神田川の上流域に位置しています。この流域は、市街化率97%と国内で最も人口密度が高く、環境負荷の大きい一帯です。中野区で水害を防ぐには、流域の雨水を一気に下水道に流入させないことが肝要です。対策は、流域の下水道台帳にある排水溝、雨水ますとつながるそれぞれの敷地にミニダムを造り、雨水をためる、しみ込ませることです。
まず、ためるために有効なのが雨水タンクです。雨どいと雨水タンクをつなぐことで、屋根に降った雨を貯留できます。ためた雨水は散水、水やり、掃除、災害時にも役立ちます。
質問 23区のうち15区で雨水タンク設置の助成制度があります。東京都には流域対策等強化・推進事業補助金等があり、自治体を通して雨水タンクへの補助を行っています。この事業を活用して、区内全域がミニダム機能を備えるように、雨水タンクの設置を推進してはいかがでしょうか。
答弁 雨水タンクを設置することによって、建物の屋根に降る雨を集めて、ためた雨水を樹木への散水、トイレの洗浄水などに利用できるほか、災害時の雨水利用にも役立てることができ、貴重な水資源の節約になります。また、雨水タンクの設置が進むことによって、多量の雨水を一時的にタンクにためておくことができ、ゲリラ豪雨による都市型洪水の発生防止にも寄与できます。
このように、雨水タンクの設置は環境に優しく、水害リスクの軽減にもつながるため、都からの補助の活用も含め、補助メニューの一つに加えることを検討したいと考えております。
次に、雨水をしみ込ませる施設としては、浸透ますがあります。一般に、直径25センチの浸透ます1個で1時間にお風呂1杯分の雨水を地中に浸透することができます。杉並区や練馬区など、一定の要件の下で浸透ますの工事費が助成対象となっている自治体もあります。
質問 当区では、現在、民間建築物の場合、敷地面積300平方メートル以上の建築計画が浸透ますなど雨水流出抑制施設設置指導の対象となっています。2023年度の対象となる建築計画数は71件、うち届出数は48件で、約3分の1が未設置です。東京都流域対策等強化・推進事業補助金は、浸透ますも対象になっています。この補助金を活用して、浸透ます設置の推進を図ってはいかがでしょうか。
答弁 雨水流出抑制施設に関しては、指導要綱に基づいて、建築主に対し雨水を貯留する施設や地下に浸透させる施設を設置するよう協力を求めていることで、一定の効果が上がっていると認識をしております。より一層の雨水流出抑制施設設置に向け、今後も建築主への情報提供及び指導を積極的に働きかけるとともに、補助金等の活用についても検討してまいります。
中野区は、これまでに1時間当たり100ミリを超える豪雨を経験しています。河川と調節池を増強しても合計65ミリでは万全な水害対策とは言えません。
そこで、私たち生活者ネットワークは、中野区全体で取り組める流域治水に可能性を見出しています。なぜなら、流域治水は、河川沿いの水害リスクのある地域だけではなく、河川から離れている高台でも雨水貯留、浸透に効果的に取り組めるからです。街路樹の育成、緑化・緑地化、レインガーデン、透水性舗装、緑溝など、ためるとしみ込ませるを同時に高める多様なグリーンインフラを適材適所に配置できるのです。
本来、雨は水害をもたらすとともに、自然の恵みでもありました。都市の近代化は、流域をグレーインフラで覆い、雨水を厄介者にしてしまいました。流域治水は、グリーンインフラを用いて水害を抑制し、雨水を再び自然の恵みとして生かす取組です。
中野区都市計画マスタープランでは、「まちを守り、うるおいを生み出すグリーンインフラ」の育成、強化を基本的な都市構造として位置付け、防災・減災、CO2の吸収、景観形成、雨水浸透機能など様々な機能を担っていることが明記されています。中野区でグリーンインフラを進めるためには、防災、まちづくり、環境など関係する部署を横断して取り組まなければなりません。
質問 杉並区は5月20日、グリーンインフラを活用した流域治水を推進するため、専門家との連携協定を締結しました。今後は、学習会の開催やグリーンインフラ推進会議の設置を予定しているそうです。
都市計画マスタープランの方針を推進するためには、当区がまだ実施していないレインガーデンを導入したり、杉並区のグリーンインフラ推進会議のような会議体を設置するなど、グリーンインフラのポテンシャルを高めていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
答弁 中野区都市計画マスタープランでは、中野区の基本的な都市構造として、「まちを守り、うるおいを生み出すグリーンインフラ」の育成、強化を図ることとしております。他自治体の事例等も参考にしつつ、中野の町に適したグリーンインフラの取組を推進してまいります。
区民との取組の推進について
この項の最後に、区民との取組の推進について伺います。
流域治水は、誰もが日々の暮らしの中で取り組めます。例えば、降雨時にバケツなどで雨水をためる、ベランダなどに雨水を貯留する装置を取り付ける、降雨時に不要不急の洗濯や風呂掃除をしない、路上の雨水ますにごみを捨てないなど、いろいろあります。
質問 流域治水は、バケツ1杯でも雨をためようとなるよう、私たちの意識を変え、ライフスタイルを変えることでもあります。一人ひとりにできる取組を周知することで、区民全員参加の治水対策が促されると考えます。流域治水への理解を深める広報や学習会の開催に積極的に取り組んではいかがでしょうか。
答弁 区は、ホームページや中野区民防災ハンドブック等において、各家庭での浸水対策を周知しているほか、水防訓練の際にも住宅浸水対策広報を展示して啓発を行っております。今後も、各種防災訓練や水防訓練等において、流域治水に対する取組を区民一人ひとりが理解し、行動に移せるように働きかけてまいります。
中野区は、ほぼ全域が神田川流域にあります。区民生活は、上流自治体の土地利用、暮らし方、水害対策の影響を受けます。同様に、中野区の在り方は、下流域の住民に影響を及ぼします。神田川流域の一員として責任のある雨水対策、流域治水を進めるように求めます。