自立支援、エンパワーメントの視点にたった女性施策の推進を —第2回定例会一般質問(1)—
6月26日、第2回定例会での一般質問です。
1、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援法)について
2、中野区男女共同参画基本計画の改定について
3、スペースとしての男女共同参画センターについて
改選後初の一般質問に立地ました
1、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援法)について
2022年5月、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援法)が、超党派による議員立法で成立し、2024年4月に施行されます。日本における総合的な女性支援はこれまで、「売春防止法」(売防法)を根拠とした「婦人保護事業」として行われてきました。
「売春をなすおそれのある女子」(要保護女子)の保護更生を目的とする婦人保護事業はこの間、DV被害者など対象者を拡大してきた一方で、女性の福祉増進や支援の視点が不十分なまま抜本的制度改正がなされず、女性の支援ニーズの多様化に対応できない制度的限界の課題がありました。
コロナ禍によって、女性の自殺者の増加、シングルマザーや女性に多い非正規労働者の雇用や収入に大きな影響が出るなど、ジェンダー平等政策の遅れで平時からあった問題が顕在化し、実態にあった制度改正、支援の在り方が求められています。
女性支援法は、女性が、女性であることにより様々な困難な問題に直面することが多いことに鑑み、困難な問題を抱える、あるいは抱えるおそれのある女性を施策対象にしています。また、女性が自らの意思を尊重されながら、きめ細やかに寄り添う支援を受け、自立して暮らす社会の実現を目的としています。
1956年(昭和31年)成立の売防法から実に66年の年月を経て、新たな女性支援の枠組みが構築されることになりました。
女性支援法には、「売防法」にはなかった、「女性の福祉」「人権の尊重や擁護」「男女平等の実現」といった視点が明確に規定されており、女性支援の質的、量的な変化を期待するところです。
この項の初めに、事業を担う自治体として、女性支援法をどう捉えているか伺います。
区長 「女性支援法は、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係などの事情によって、日常生活または社会生活を営む上で困難な問題を抱える女性に支援を行うことを定めたものであります。区の責務として、困難な問題を抱える女性一人ひとりに最適な支援を行う必要があるものと捉えております」
女性支援法では基本計画の策定について、都道府県では義務、特別区を含む市町村では努力義務と規定されています。
婦人保護事業から女性支援事業へとパラダイム転換する女性支援法の意義は大きく、相談支援事業の現場である中野区において事業を推進していくためには、基本計画を策定すべきだと考えます。区の見解を伺います。
区長 「困難な問題を抱える女性への支援に関する市町村基本計画は、国の基本方針によって、男女共同参画基本計画と一体のものとして策定することができるものとなっております。区では現在、男女共同参画基本計画の改定作業を進めておりますので、その中に位置付けることを予定をしております」
女性支援法の施行に伴い、支援の中核である3つの機関の名称がかわります。婦人相談所は女性相談支援センターに、婦人相談員は女性相談支援員に、婦人保護施設は女性自立支援施設にそれぞれかわります。重要なのは、名称の変更とともに、その役割についても法律の趣旨に則ったものへとかわることです。
中でも、支援への入り口となる女性相談支援員は、支援対象者にとって最も身近な存在であり、本人の意思決定、支援の内容などに大きな影響を与えます。
相談員が丁寧なヒアリングを行い、関係機関との連絡調整、連携など対象者に寄り添った、継続した支援を行うには経験と専門性が必要です。現行の中野区婦人相談員設置要綱によると、当区の3名の相談員の方々は現在、専門性の高い職種として、公募によらない会計年度任用職員として採用されています。しかし、再度任用については上限2回となっており、更新2回、つまり3年でリセットされます。
相談員の方々が安心して働き、経験と専門性を発揮する環境をどう確保するのか、区の見解を伺います。
区長 「婦人相談員は3年に一度採用選考を行いますが、採用の継続は可能となっております。婦人相談員の配置の促進に関する国の通知では、婦人相談員の任用につきましては、再度任用することが可能であること、また任用の回数や年数が一定に達していることのみを捉えて採用に制限を設けることは避けるべきものであるということが示されております。婦人相談員から女性相談支援員へと名称が変わっても、国通知に沿って、豊富な経験や高い専門性を持った職員の採用に努めてまいります」
女性支援法のポイントの一つに、法第13条「民間団体との協働による支援」があげられます。この法律が議員立法で成立したと述べましたが、その背景にはいわゆるJKビジネスやAV出演強要など、若年女性への支援の課題もありました。婦人保護事業からこぼれ落ちていた女性たち、声をあげられないでいた女性たちの支援に、先に動き出したのが民間団体です。
コロナ禍で生理の貧困が社会問題となった時、豊島区では日頃から連携している支援団体を通し、迅速に女性たちの声の聞き取りができたことで素早い対応につながったと聞いています。当区の女性相談でも20代、30代の方の相談が現状多いと聞いています。区内外で活動する団体との協働をこれまで以上に推進していただくことを期待しています。
2024年4月の法施行に向け本年3月、国は基本方針を取りまとめました。基本方針にある支援の内容は、アウトリーチ等による早期の把握、居場所の提供、一時保護、被害回復支援、日常生活の回復支援、同伴児童への支援、アフターケアーなど多岐にわたっています。今後大きく変わる女性支援においては、これまで以上に幅広い関係機関との連携が求められます。
女性相談の窓口だけでなく、庁内の各部署や関係機関においても支援対象者を発見し、適切な支援につなげるためには、法律の周知と理解を深めることが必要です。どのように取り組むのか伺います。
区長 「女性支援法の概要等を全庁に周知するとともに、関係機関、関係団体については、中野区要保護児童対策地域協議会、中野区DV防止対策連絡会等を通じて周知をし、理解促進を図ってまいります」
2、中野区男女共同参画基本計画の改定について
次に、中野区男女共同参画基本計画の改定に関連して2点伺います。
当区の本基本計画については、中野区男女平等条例第7条にその規定があり、2項には「策定するにあたっては、区民及び事業者の意見を反映することができるよう適切な措置をとるものとする」とあります。
現在第4次の本基本計画は、来年度から第5次の計画期間に入ります。これまでの改定では、庁内で素案を作成し、議会報告、団体への意見聴取、区民意見交換会を実施した後、案になった段階でパブリックコメントの手続きが行われています。つまり、当区の男女共同参画基本計画は、審議会の設置がない状態で改定が行われてきました。
前回2018年の改定時には、意見聴取を行った団体からの意見の提出はなく、手続きに則っていたとしても、現在の改定プロセスでは、区民、団体の意見反映が十分とは言えない状況です。また、素案作成までの経緯も見えません。
時期を同じくして改定される「中野区ユニバーサルデザイン推進計画」は、審議会を設置して改定が進められています。
今回の男女共同参画基本計画改定にあたっては、人権施策推進審議会にも意見聴取を行うとのことですが、本来は専門の審議会で検討すべきものだと考えます。
素案作成までの過程を可視化し、より多くの区民、団体の意見を反映するためにも、中野区男女共同参画基本計画の改定にあたっては、今後は審議会を設置して行ってはいかがでしょうか。区の見解を伺います。
区長 「今回の計画改定に当たっては、考え方を議会や中野区人権施策推進審議会にお示しをし、御意見を頂いた上で素案を作成することを考えております。次回の計画の改定に当たりましては、男女共同参画に関する審議会の設置についても検討してまいります」
当区の男女共同参画センターでは現在、情報誌として「アンサンブル」を年1回発行しています。企画・編集委員を区民から募集し、区と協同で作成していますが、企画編集に関わる方々の熱意、工夫が感じられ、読み応えがあり、私は毎号楽しみにしています。
さらに、多くの方が手にとりたくなるような視点でデザインを工夫することで、読者が増えるのではないかと考えます。
当区には区の広報物に対し専門的な支援や助言を行う広報アドバイザーが導入されています。この後の質問とも関連しますが、スペースとしての男女共同参画センターのない当区にとって、アンサンブルは男女共同参画についての情報発信をしている貴重な情報誌です。
より多くの人の目にとまり、男女共同参画についての関心を高めるために、広報アドバイザーを活用するなど、アンサンブルのデザインのブラッシュアップを行なってはいかがでしょうか。
区長 「アンサンブル」は、区民から企画、編集委員を募集をし、区民の視点を盛り込み、身近なテーマを設けることで、親しみを感じつつ、男女平等、男女共同参画に関心を持ってもらえる内容としてまいりました。より読みやすい紙面となるよう、広報アドバイザーを活用するなど、今後も工夫をしてまいります」
先日、国別の男女格差を数値化したジェンダーギャップ指数2023が公表されました。世界146か国中、日本は125位。昨年の116位からさらに順位を下げ、過去最低となりました。ジェンダー平等を喫緊の課題として推進するために、アンサンブルのブラッシュアップを機に、広報マインドの醸成にもつなげていただくことを要望します。
3、スペースとしての男女共同参画センターについて
最後に、スペースとしての男女共同参画センターについて伺います。
当区では1984年(昭和59年)に現産業振興センターの場所に婦人会館を開設して以降、女性会館、男女共同参画センターと名称変更をしながら、2013年に区役所本庁舎内に移転するまでの29年間、スペースとしてのセンターを有していました。スペースとしてのセンターというのは、相談、市民の交流・活動ができる場所、市民の活動を支援するための運営などがなされている場所のことです。
当時は女性の生き方なんでも相談、区民も参加する運営会議、女性団体連絡交流会、学習会や連続講座も開催され、会館・センターを拠点にして活発な活動が行われていました。
会館・センターで活動していた相談員、研究者、保育者、受講生の方々が女性支援のグループを立ち上げ、現在もNPОとして区内で活動を続けられています。先日代表者の方にお話を伺いましたが、センターが女性団体の育成に力をいれていたこと、センターでの出会い、居場所があったことで団体が生まれたとおっしゃっていました。現在まで続いている活動の原点は、女性会館、男女共同参画センターにあったことがわかりました。
区役所本庁舎内に移転後は、当区は23区で唯一、スペースとしての男女共同参画センターのない自治体となり、区民、団体は交流、活動の拠点を失い、新たな団体の育成が難しい状況にあります。
この間、区民の方々からは、スペースとしての男女共同参画センターを求めるお声をお聞きしています。
女性支援法により新しい支援の枠組みが構築されようとしている今、相談のきっかけ作りに有効な居場所として、民間団体が育成される場として、男女労働者のワークライフバランスやハラスメント、ジェンダーに関する調査、啓発講座を行う場として、そして、区民の交流・活動の場として、スペースとしての男女共同参画センターが必要です。
自立支援とエンパワーメントの視点を持った女性施策推進のために、親和性の高い分野との複合化を含めた、スペースとしての男女共同参画センターの今後のあり方を検討するべきだと考えます。
区長 「男女共同参画センターを庁内に配置することで、女性に関する相談、保護及びその後の自立支援までの一貫した支援や関係機関等との連携を行ってまいりました。女性支援法の施行によって、民間団体との協働といった新たな支援の枠組みなどが求められていることから、男女共同参画センターの在り方を検討してまいります」