地域包括ケアと自治基本条例に則った区政運営について
2017年2月22日、第1回定例会での一般質問です。「地域包括ケア」と「自治基本条例に則った区政運営」について質問しました。
「中野区に住んでいてよかった」と思える「地域包括ケアシステム」に
世界でも類を見ないスピードで高齢化が進む日本ですが、都市部ではとりわけ高齢者が増加しており、当区も例外ではありません。将来人口の推計では、当区の高齢者人口は、2025年頃まではほぼ横ばい、それ以降急激に増加し、ピークは2055年で、3人に1人が高齢者となり、5人に1人が75歳以上の後期高齢者となるとされています。また、ひとり暮らし高齢世帯も増加する見通しです。
国の政策は医療と介護の連携で、認知症や中重度者も在宅でという流れにあり、在院日数の短期化や病院機能の再編が進んでおり、高齢者が最期まで、住み慣れた地域でその人らしく暮らせる体制、つまり「地域包括ケアシステム」をどう組み立てていくかが課題となっています。
当区では、子どもから高齢者、障がい者まで、全ての区民への支援体制の構築をめざす地域包括ケア体制を掲げ、現在、(仮称)「中野区地域包括ケアシステム推進プラン」を策定中で、私は、「全ての区民」を対象にしている点が、当区の計画における肝だと考えます。医療・介護関係者などの間ではよく聞かれるようになった「地域包括ケアシステム」ですが、一般にはまだ浸透していないのではないかと感じます。そこで、区がめざす「地域包括ケアシステム」が、使う側にとって、「中野区に住んでいてよかった」と思える体制になるよう、4点質問します。
まず1点目。当区では、まずは「高齢者版地域包括ケア推進プラン」を策定し、子ども版、障がい者版へと進めていくと伺っていますが、別々で策定するねらいは何でしょうか。
高齢者版、子ども版、障がい者版の計画が3つできたとしても、それぞれが別々のものとして機能するのではなく、各計画が包括的な計画として機能しなければ、地域資源の有効な活用や連携につながりません。地域包括ケアシステムの構築には、あらゆる社会資源のネットワークが重要な要素だと考えるからですが、こうした地域包括ケア体制の姿を描いた時に大切なキーワードの一つが、世代間の交流ではないでしょうか。
例えば立川市では、栄養士の勉強をしている学生を講師に、男性の料理教室を開いたところとても活気づいた教室になったそうです。また、若いママたちを対象にした体操教室を開催した時には、地域の子育て経験のある女性たちが体操の間子どもたちをみることで交流が生まれ、子育ての悩みを聞いてもらったりしています。
こうした、普段からの世代間の交流が、地域の関係性の裾野を広げ、新たな担い手の発掘や引きこもりの方の外出の喚起にもつながっていくのではないかと考えます。
そこで2点目の質問です。地域包括ケアシステムの構築にあたっては、「多世代交流」の考え方を反映させ、積極的に世代間の交流の場づくりをはかっていくべきと考えますが、いかがでしょうか。区のお考えを伺います。
来年度から、区民活動センターの職員2名と、地域包括支援センターの保健師、福祉職の4名からなる(仮称)地域力推進チームを、15か所の各区民活動センターに配置して、地域資源の開拓や引きこもりの高齢者、認知症の方の発見、サービスへの結びつけなどを行っていくとしています。このチームは、介護保険制度に位置づけられた「生活支援コーディネーター」の役割を兼ねるとされていますが、このチームに期待されるのは、地域をいかに熟知しているか、そしてその情報やネットワークをいかに地域で共有、活用できるかだと思います。
当区の地域包括ケアを「全ての区民を対象」とするのであれば、子ども版そして障がい者版の地域包括ケアシステム推進プランの策定を見越して、(仮称)地域力推進チームに、世代を横断する、分野を横断する、地域福祉のコーディネーターとしての役割を持たせてはいかがでしょうか。3点目として伺います。
地域包括ケアシステムは文字通り、地域全体での支援の体制をつくることですから、介護保険制度の枠内に留まらない、たとえば、子ども食堂など、住民の方々の自主的な活動も重要な社会資源だと考えます。厚生労働省の資料には、ボランティアなどの社会参加の割合が高い地域ほど、転倒や認知症やうつのリスクが低い傾向が見られるという調査結果もあります。
こうしたインフォーマルな居場所や社会参加の機会も地域のセーフティネットとして位置づけ、必要な支援をしていくべきと考えます。区のお考えを4点目の質問として伺いまして、次の、自治基本条例に則った区政運営について伺います。
自治基本条例に則った区政運営について
昨年4月1日、区民の方が、平和の森公園の再整備と、新体育館の整備構想・基本計画策定支援業務委託の関係文書を情報公開請求したところ、「非公開」とされました。請求された方はこの「非公開」の決定を不服として審査請求を行い、本年1月18日付けで、中野区情報公開・個人情報保護審査会から答申がだされました。答申は、個人情報保護に該当する箇所をのぞき、全面開示すべきであると、請求人の主張をほぼ認める内容となっています。
請求人の主張は大きく2点で、一つは、中野区自治基本条例第3条の、「区民は区の政策の企画立案、検討、実施、評価及び見直しのすべての過程に参加する権利を有する」のであるから開示すべき、もう一つは、情報公開がされていれば、整備事業費について、意見交換会等で有意義な議論ができたはずである、というものです。
区は、この答申通り、個人情報に該当する箇所を除き、開示する対応をしたと伺っていますが、請求人が情報公開請求をした昨年4月初旬は、「新しい中野をつくる10か年計画」第3次の改定にあたってパブリック・コメント手続きが行われており、平和の森公園再整備にあたっての事業費の概算も示されていました。また、5月から6月にかけて、平和の森公園再整備基本計画(案)のパブリック・コメント手続きが予定されていました。
審査会の判断にもある通り、整備費に係る情報は公共工事について適切な事業費設定がなされている事を区民が検証し、区が区民に説明を果たす上で重要な情報です。業務委託の成果品が公開されていたとすれば、請求人の主張にもあるように、整備費の検討において有意義な議論になった可能性は高いと思われますが、残念ながら時間は戻せません。
1点目の質問です。この答申の内容は、意見交換会、パブリック・コメント手続きをやり直す検討をしたとしてもおかくはない、重要なものだと考えますが、区の見解を伺います。
平和の森公園の再整備にあたっては現在の、「緑の広場と避難場所の公園」から、スポーツの拠点へとその性格を変貌させる、中野体育館の移転も含む計画でありながら、検討会などの設置もないままに進められ、今回の情報公開請求への対応からも、区民が判断するための情報提供、情報共有を十分にはかろうとする姿勢が見えません。
10か年計画では平和の森公園の再整備のほかにも新庁舎建設、学校統廃合、公共施設の更新などが計画されています。これらの計画は、自治基本条例の基本原則である「区民と区との十分な情報共有を基に、区民に区政への参加の機会を保障」して進められるべきと考えます。最後に、改めて、自治基本条例に則った区政運営の実現に向けた区の見解を伺いまして、私の質問を終わります。