たとえば「弱者が弱者のままで尊重される社会」
突然ですが、以下の◯◯にはどれも同じ言葉が入ります。何だと思われますか?
DV被害の経験がある◯◯の割合は31.3%
結婚で姓をかえる◯◯の割合は96%
小・中・高校と特別支援学校での校長の◯◯比率は16.4%
非正規公務員の4分の3は◯◯
非正規労働者の◯◯の割合は68.1%
医学部の入学者に占める○◯の割合は37.2%
15人の最高裁判所判事のうち◯◯は2人
衆議院議員465人中、◯◯議員は45人で9.7%
数字でわかるジェンダー不平等
おわかりですよね。そう、「女性」です。このように男性との格差が大きいものはまだまだあります。
なぜこんな問いかけから始めたかと言いますと、10月31日の衆議院議員選挙の結果を受けて、国民はジェンダー平等に関心がないかのような報道があったからです。今回の選挙では、私自身40年来実現を望んでいる選択的夫婦別姓が争点の一つになり、「ジェンダー平等」を政策に掲げる政党もありました。こうした政策を掲げた野党が議席を減らしたことで、ジェンダー問題は票につながらないかのように結論づけることには大きな疑問があります。
そもそも、(比例復活のある)小選挙区制と比例代表制の現在の選挙制度は、必ずしも投票結果と獲得議席が一致しないという根本問題があります。各政党の政策の打ち出し方などの課題はあるにせよ、議席数だけで選挙総括すると見えなくなる民意が出てきます。
また、人権や差別の問題は、多数決で決めるものではないとも思います。
行動する若者たち
若者世代の政治参加を当たり前のカルチャーにしようと様々な発信をしている「NO YOUTH NO JAPAN」が実施したアンケートでは、特に積極的に取り組んでほしい社会課題として30歳未満で最も多かったのは、「ジェンダー平等(選択的夫婦別姓など)」と言う結果が出ています。しかも、ジェンダー平等には、韓国(34.1%)に次いで世界第2位(23.5%)の、男女の賃金格差の是正を求める意見が寄せられています。
社会の現状をしっかりと捉えたこうした若者世代の声を、なかったことにしてはなりません。
「ジェンダー平等」は誰もが生きやすい社会につながる
生活者ネットワークは、政策の意思決定の場にもっと多様な声を反映させるために女性議員を増やそうと活動しています。でも、女性議員を増やしましょうと訴えると時々ですが、「女性の議員なら誰でもいいのか」とか「ジェンダーは好きじゃない」などと言われることがあります。
前者の問いに対しては「男性の議員なら誰でもいいのですか」と同じ問いを返したいです。衆議院では1割にも満たない女性議員。言い換えれば、9割が男性議員です。参議院でも3対7の割合です。このアンバランスな構成のもとで行われている政治は、あなたが望む社会を実現していますか? 私の答えは「NO」です。
そして、「ジェンダーは好きじゃない」という人には、まずは、冒頭で列挙したようなジェンダー不平等を思い浮かべていただきたいです。あなたの「生きにくさ」「心の中のモヤモヤ」は、男女差別によるものかもしれないし、社会に押しつけられているいろいろな「らしさ」が原因かもしれません。それは私自身が、ジェンダーという言葉を知ったことで社会の見え方が変わり、実感したことです。そして、それは女性に限らず、男性にも生きづらさを強いていると思います。
先日、上野千鶴子さんのお話を聞く機会がありました。上野さんは、フェミニズムは「弱者が弱者のままで尊重される社会」を描いている、女は男のようになりたいわけでない、生産、効率の論理でなく、再生産(ケア)と分配の論理の社会を目指している、とおっしゃっていました。
今日は強者の人が明日は弱者になるかもしれない状況にあって、障がい者には生きている価値がないと犯罪の被害者になったり、生活保護受給者や外国人の人に心ない言葉を浴びせたりと、弱者に冷たい社会。そんな社会に生きたくありません。
どんな社会に生きたいか。どんな社会をめざすのか。上野さんの「弱者が弱者のままで尊重される社会」という言葉は、私の中にストンと落ちる、とても共感できるものでした。