公園のトイレ、使っていますか?

「公園のトイレからバリアフリーを考える」第2回オープン・オフィス・デイ

中野ネットを知ってもらおうと始めたオープンオフィスデイ、第2回目は8月27日に「公園のトイレからバリアフリーを考える」と題して、なかの生涯学習サポーターの会副会長、ユニバーサルデザインマップ作成実行委員長の伊藤勝昭さんにお話をしていただきました。嬉しい誤算で参加希望者(15名)が多く、会場を事務所ではなく野方区民活動センターに移しての開催となりました。

伊藤さんはわかりやすい資料を用意してくださり、実践を交えたお話は参加者の方に好評でした

バリアフリーとは、ユニバーサルデザインとは

今回のテーマはバリアフリー。現在、生活者ネットワークは「バリアチェックでまちに繰り出そう」と各地域で調査活動をしています。バリアフリーとは、生活をしていくうえでの「障壁」を「取り除く」という意味です。最近では、高齢、障がいの有無だけではなく、心の中、考え方の中にある「障壁」を取り除く「心のバリアフリー」が重要と考えられるようになりました。

一方、ユニバーサルデザインとは、はじめからバリアをつくらない考え方で、全ての人の利便性向上を目指す永続的な取組のことです。「公平性」「柔軟性」「単純性」「安全性」「わかりやすさ」「省体性」「空間性」の7つの原則があります。

中野区は2018年3月に「中野区ユニバーサルデザイン推進条例」を制定、翌19年5月に「中野区ユニバーサルデザイン推進計画」を策定しました。

ユニバーサルデザインマップはまちの情報が満載

伊藤さんのマップ作りは2017年「中野バリアフリーマップ」から始まりました。2018~2020年にはオリンピック・パラリンピック開催に合わせて文化・歴史等の地域情報を加味した「おもてなしマップ」の発行、2021年からは中野区区民公益活動推進基金助成事業「なかのユニバーサルデザインマップ」づくりに取り組んでいます。

現地を歩いて情報を集めるマップ作りは中野区を深く知る機会になったそうです。区内の公園にある150か所あまりのトイレすべてを調査し、それらを取り込んだ「なかのユニバーサルデザインマップ」となっています。そしてこのマップは、区役所や区の施設で配布しています。

伊藤さんによると、車いすでまちに出ると、例えば、歩道の段差、坂の角度、エレベーターの開口扉間隔、駐車場の空間(車いすの出し入れには通常の1.5倍必要)、トイレ、公衆電話、自動販売機など、「進めない、通れない、方向転換できない、座ったままでは手が届かない」といったバリアがあります。ユニバーサルデザインマップは、中野区内の様々な障壁を取り除いくようデザインされて作られたものの所在情報です。

ユニバーサルデザインマップにはさまざまな情報があり、ピクトグラム(絵文字・絵記号)で示されています。例えば、トイレの種類だけでも和式、洋式、ウォシュレットの有無、多機能、介助用設備、オストメイト対応などがあります。

マップには、坂の高低方向や角度など、調査を踏まえたさまざまな役立つ情報が記載されています

変化に対応してマップを更新していく

伊藤さんはマップ作りでは①先駆性、②創造性、③発展性、④情報更新を大切にしています。今年(2022年)も、10月にマップ作り講座を開催し、区民参加で新しい視点を取り入れて更新します。今回はウォシュレットがあるか、トイレットペーパーは備えているかをチェックするそうです。

講習会は3つのステップからなります。まず座学でマップ作りの基礎を学び、次に実踏で中野区を5地域のチームに分けて実際に車椅子を使った実踏をします。参加者はなるべく居住地域を担当し、普段気付かないバリアを知り、自分事として捉えることで暮らしやすいまちづくりにつながるよう配慮しているそうです。最後に調査結果に基づきユニバーサルデザインマップを作成します。

3つの地区に分けて作られている「なかのユニバーサルデザインマップ」

時代の流れとともに変わる公園のトイレ

ひと時代前は、公衆トイレは臭くて汚くてあまり使いたくないというイメージがありました。公園づくりに詳しい参加者からは、昭和のころは近隣住民が公園のトイレ建設に反対をした。また中野区は小さい公園が多いのでトイレをおけないという問題があり、デザインやサイズに工夫した、という発言がありました。

平成に入って哲学堂公園、もみじ山公園などからトイレが作られるようになり、中野区では年に2か所の公園を、トイレをはじめとするユニバーサルデザイン化しているそうです。(今度は個性がないという意見もあるそうです。)

視覚障がいのある参加者からは、車いす用にデザインされた多機能トイレに案内されることがある、しかし広すぎて「迷子になる」との発言がありました。障がいのある方は多機能トイレへという思い込みもバリアの一つ、障がいの種類も多様なのですね。

誰でも、出先でトイレを探して困ったという経験をお持ちではないでしょうか。伊藤さんのお話を伺い、中野区の公園がきれいになって、ユニバーサルトイレも増えてきてよかったなとおもいました。公園のほかに行政施設や、コンビニエンスストアでもトイレを使えます。ユニバーサルデザインマップがあれば、安心して外出ができますね。利用時は次の人のことを考えてきれいに使うように心がけたいですね。

*オープン・オフィス・デイではバリアフリーをテーマに3回シリーズで開催します。2回目は9月2日、視覚障がいのある松田茜さんにご自宅での生活の工夫と外出時に感じていることを伺いました。3回目は実際にまちに繰り出し、バリアチェックを行います。