子どもが「子ども時間」を生きるために、「ヤングケアラー」への支援を

精神障がいやこころの不調、発達凸凹をかかえた親とその’子ども’の情報&応援サイト「子ども情報ステーション by ぷるすあるは」より

孤立しやすい「ヤングケアラー」

最近ニュースなどでよく「ヤングケアラー」という言葉を目にしたり聞いたりするようになりました。ヤングケアラーとは、家事や家族の世話、介護など、本来大人が担うような家族のケアを日常的に行なっている18歳未満の子どものことです。

ヤングケアラーについては、当事者や周りの人たちが家族の世話をするのは当然と思っていることが多く、この問題がなかなか認識されません。
ケアラーの子どもたちは、ケアを担っていることを口に出せないまま誰にも相談することができず、同世代の中で孤立したり、支援の受け皿もなく、学びや遊び、友人との時間など、人生の大事な子ども時代を奪われる状態になっている場合もあります。

このような実態は、ケアラー支援のための調査・研究、啓発活動を行なっている「一般社団法人日本ケアラー連盟」、介護者のサロンの運営などをしている「NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジン」などの民間団体や研究者の方の調査活動によって、明らかになっていました。

私は、ケアラー連盟が主催する学習会に何度か参加し、他の自治体の状況などを調べたりして、2018年第1回定例会で、ケアラー・ヤングケラーへの支援について一般質問しました。https://kugikai-nakano.jp/view.html?gijiroku_id=3285&s=細野かよこ%E3%80%80ケアラー支援&#S1

この時点では中野区のヤングケアラーへの認識は十分とは言えず、前田中大輔区長の答弁は具体性のない無難な内容でした。

やっと国が動き出した!

2018年〜2020年度にかけて、厚生労働省が「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」を実施。これを受けて2021年3月、厚生労働省・文部科学省が「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」を立ち上げ、5月に報告がまとめられました。報告では、早期発見の重要性、支援策の推進、社会的認知度の向上を柱に、取り組むべき施策が提示されました。

そして、2022年度からはヤングケアラー支援体制強化事業として、自治体が実施する実態調査・把握、ヤングケアラー・コーディネーターの配置、相談支援体制の推進、オンラインサロンの運営・支援などの事業に対し、財政支援を行うとされています。

先述の日本ケアラー連盟の設立が2010年、生活者ネットワークがケアラー支援に取り組んでほぼ10年、やっと国がケアラー支援に動き出しました。

2021年は3自治体が「ケアラー支援条例」を策定

一方、国の動きに先んじて、2020年3月には全国で初めて、埼玉県が「ケアラー支援条例」を制定し、ヤングケアラーへの支援が明記されました。さらに、今年(2021年)3月に北海道栗山町で「ケアラー支援条例」が、6月に三重県名張市で、9月に岡山県総社市で、「ケアラー支援の推進に関する条例」が制定されています。

また、条例まではいかなくても、調布市では地域福祉計画に「ケアラー支援」が位置づけられたり、文京区では地域福祉保健計画にヤングケアラーが課題として記載されるなど、自治体計画に明記される事例もあります。

他にも、鳥取県、神戸市では相談・支援窓口の設置、愛知県大府市では「ヤングケアラー支援連絡会議」を設置、群馬県高崎市では2022年度にヤングケアラー支援のヘルパー派遣を行うなど、自治体での取り組みも広がっています。

子どもの権利条例の精神いかし、ヤングケアラー支援の推進を

中野区は2022年3月に「中野区子どもの権利に関する条例」が策定される予定です。現在示されている条例案に盛り込むべき事項には、第2章 子どもの権利の保障の項に、「学び、休み、および遊ぶこと。そのために必要な環境が整えられること」とあります。

ヤングケアラーの子どもたちのこうした時間を保障することは大人の責任です。人生という尺度で見れば子ども時代はあっという間です。国も本腰を入れてきたヤングケアラーへの支援。今を生きる子どもたちが、貴重な子ども時代を謳歌して大人になれるよう、中野区にも対応を求めていきます。

*生活者ネットワークは、2020年に「ケアラー支援調査プロジェクト」を立ち上げ、多様なケアラーへの聞き取り調査、自治体の社会資源調査を行い、現在報告をまとめています。私もプロジェクトのメンバーとして関わっています。報告がまとまりましたら、改めてお知らせします。